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2020 / 01
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船に乗れ
【株式会社ポプラ社刊】
「船に乗れ!」藤谷治著

著者の藤谷さんの半分自伝的な青春小説。
チェロを弾く主人公の成長を描いていますが、音楽のみならず、
ソクラテスやニーチェがでてきたりして、モチーフの多様性で
飽きさせずに一気に読ませてくれます。
音楽を素材として使い、言葉で何とかしようとするのは
なかなか大変なことですが、実際ここに書かれている
オーケストラでの苦労は経験したものでなければ書けません。
この主人公は自身の才能のなさを自覚し、
プロとしてやっていくことを断念します。プロになるということは、
音楽の本質とは何も関係のないことなのに、主人公も
その恋人も音楽そのものをあきらめ、止めてしまう。
その本質にたどり着く前に。音
楽とはそんな薄っぺらなものではないはずで、
違和感があるならその点でしょうか。



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グールド
【筑摩書房】
「グレン・グールドのピアノ」
ケイティ・ハフナー著 鈴木圭介訳

グレン・グールド、私にとっては「ゴルトベルク」ではなく
ピアノを始めたころの「インベンションとシンフォニア」でした。
しかしながら彼の録音から感動をもらったことは
ありませんでしたがこんなところで感動をもらうなんて。
良書です。グールドの音楽と、スタインウェイのピアノ、
そして調律師たちの織りなす物語。グールドのピアノへの
こだわりは半端ではありません。ひたすらそれは彼の音楽に
奉仕するべきものとして。一切の妥協を許さぬ姿勢は
ゴルトベルクの2度目の録音に日本のメーカーの楽器を
手にせざるを得ない状況にまで追い込まれます。
そしてこのアルバムがリリースされてから1週間後、
以前の録音よりさらに光芒を放つゴルトベルクに
抱かれるようにしてグールドはこの世を去ります。
彼亡き後にあるピアニストがグールドの愛機CD318で
バルトークを弾いたとき、まるでそれを嫌がるかのように
トロントのほうに身をよじって逃れようとしたピアノに問います。
「あなたはどこへ行こうとしているの?」と。
このエンディングに感動しました。グールド聴くべし。
食わず嫌いはもしかすると人生にとって大きな損失に
なるところでした。(特別寄稿・J.N)



スーザントムズ
【春秋社】
「静けさの中から」 スーザン・トムズ著 小川典子訳

これは良書。「音楽って何?」この答えは私も探しています。
ただ、文章とその内容ががいくら素晴らしくても、
音楽家は音楽をきかせてなんぼだし、音も聴かなきゃ
ということでCDもいくつか早速入手しました。
イギリスのピアニスト、スーザン・トムズ。
この本を手に取るまでこの人の録音は聴いたことが
ありませんでした。ピアノ・トリオの王道作品、ブラームス、
メンデルスゾーン、ベートーヴェン、シューベルトなどなど、
良心的なハイペリオン・レーベルがすべて出していますが、
さながらイギリスのボザール・トリオといった趣です。
聴いた感想はまた別のものとして、読み物として
共感できるところ、なるほどと感心できるところ
、ちょっと違うかなと思うところなどなど、
別のソナーメンバーズのブログに掲載してみたいと
思います。どうぞこちらをご覧ください。
http://sonarmc.com/wordpress/

(特別寄稿・J.N)

巖本真理
【新潮社】
「巌本真理 生きる意味」
 山口玲子著

乳がんを患った真理さんが、執刀医に「このまま
バイオリンが奏けなくなってしまうなら、救っていただいても
生きる意味がないのです」と訴えたと言います。
バイオリンが体の一部であり、それを通じて自分の言葉を
世の中に放つ。真の意味での芸術家がここにもいました。
よく言う、まず「生きること」、生きてからこそバイオリンが・
などという言葉はここでは通用しません。
巌本真理さん、1926年にアメリカ人の母と日本人の父との
間に生まれました。そして最も多感な時代を最も困難な時代に
過ごしています。異質なものを潰そうとする「いじめ」により
不登校にまでなってしまいました。そんななか12歳で
音楽コンクールの一等賞、20歳で東京音楽学校(藝大)の
教授に抜擢されましたが、華やかなソリストの道を捨て
最もストイックな「弦楽四重奏」という世界でその存在を
しられました。この本は比較的淡々とその生涯を描いて
みせますが、サクセスストーリではなく一人の人間・
巌本真理が53歳で短い生涯を閉じるまで己の信じる道を
突っ切る姿が鮮やかに浮かび上がります。
自分の音楽を信じる、こうじゃなきゃだめだ、という言葉は
自分の音楽そのものだったのでしょう。
世に天才と呼ばれる才能を持った人たちはみな同じDNAを
もっています。巌本真理弦楽四重奏団を生で聴く機会を
持たなかった私はとても残念です。
真理さんの言葉を受け止めてみたかった。

モア
【音楽之友社】
ピアノの巨匠たちとともに - あるピアノ調律師の回想
フランツ・モア著 イーディス・シェイファー構成 中村菊子訳

フランツ・モアというホロヴィッツの調律師であった人の本。
当然二人を結びつける後ろにはスタインウェイという
ピアノがあります。ホロヴィッツのピアノ演奏については
多くの人が語り、絶賛しているのでここでは書きませんが、
この本では第三者からみた人間ホロヴィッツが垣間見えます。
とくにモスクワに行き、東京に行ったとき何を想い、
どのように行動したか、ゴシップというわけではありませんが
愉しませてくれました。ただこの本はここまでで、
相当数のボリュームがフランツ・モア自身の宗教、
キリスト教のことについて割かれています。
これには少々食傷気味でした。モアはまず人として、
そしてプロの調教師として生きてきたのでしょう。
それはわかりましたが、彼のプロフェッショナルを
期待していたのに宗教をとつとつと語られてもちょっとそれは
別のところでお願いします、となってしまいます。
せっかく面白く読み進め始めたのにというのが正直な感想。
そのせいかピアノのことはちょっとだけ。
印象に残ったのはとてもピアノに向かう姿勢のいい
ホロヴィッツの写真でした。




yatchan2003

Author:yatchan2003
2003年から活動開始。
音楽への想いを伝えたい!
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をモットーに進化中。