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2024 / 03
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後宮からの逃走
【Wiener Urtext Edition】
Overture to "The Abduction" ("Die Entführung aus dem Serail")
Original Piano Edition, KV 384/1
Composer: Wolfgang Amadeus Mozart
Edited from the sources by Ulrich Leisinger
Fingering: Detlef Kraus
Postscript: Robert Levin

モーツァルトのオペラ「後宮からの逃走」は当時大ヒットしました。
となると著作権などない時代のこと。すかさず室内楽に
ピアノソロにと編曲して出版する輩がたくさん出てきます。
いくらモーツァルトであっても先を越されてしまうと
二番煎じになりかねないため、先んじてピアノソロへの編曲を
出版しようとしました。当初はオペラ全曲を意図したらしいことが、
父レオポルドへの手紙に残っていますが、どうやら
遺されたものはわずかで、その中の一つがこの「序曲」です。
何といっても作曲者自身の編曲。
軽快な出だし、「逃げろや逃げろ!」はまったく屈託のない
魅力的なものですが、実はこの楽譜の最後には「カプリッチョ」が
添えられていて、独立した曲としての体裁を整えています。
この出版に一肌脱いだレヴィン曰く、
「ちろん、コンサートではカプリッチョ付きで弾いているよ!」とのこと。




オクテット
【Leipzig C.F.Peters】
メンデルスゾーン 八重奏曲 Op.20
作曲者による4手編曲版

メンデルスゾーンの八重奏曲をアカデミー室内アンサンブルの
演奏で聴きました。素晴らしいメンデルスゾーン、おみごと!
これが16歳の時の作品と知って二度びっくり!
「真夏の夜の夢」序曲がまだ二十歳前なのは知っていましたが、
これより以前にこんな素晴らしいものを作っていたなんて。
一気にこの曲のファンになってしまいましたが、
なにしろ弦楽のための曲。
ピアノ弾きには所詮縁のないモノと寂しい思いをしていました。
ところがそんな折、発表会用のピアノ連弾作品を探しているときに、
なんと作曲者自身が4手用に編曲したものがありました。
ペータースの譜面も入手、さっそくこれを公開でやろうと相方に
連絡しました。ピアノという単色の楽器がどれほどこの曲を
伝えられるか心配ですが、ロマン派の作曲家たちは交響曲を
はじめとして自身の大きな作品をピアノ連弾に編曲しています。
ブラームスしかり、シューマンしかりですが
当時のピアノブームを思い起こされます。
プレスト、息を吞むような音楽のうねりに熱くなりました。


フォーレのスコア
【Musikproduktion Hoeflich】
スタディ・スコア 114

フォーレ ピアノ五重奏曲第1番 ニ短調 Op.89
練習の時には、ほとんどの人がスコアを持参します。
どれだけ役に立っているかは本人次第ですが、
まずこれがないと弦楽器奏者はつとまりません。
なぜなら自分の弾く分しか楽譜(パート譜)にはないので、
スコア(総譜)を見ないと、他の人が何をやっているのか
さっぱりわからないのです。
素朴な疑問は、ピアノの入った室内楽の場合、
ピアノ譜の上にはほかのパートが小さめではあってもちゃんと
印刷されているのです。どうしてこういう慣習ができたのか
教えてほしいくらいですが、とにかくスコアは演奏するには
絶対条件になります。オイレンブルク(イギリス)なんていう
スコア専門会社も存在するくらいですから。
この曲の出版はアメリカのG.Schirmer(!)から1907年、
初演の翌年に出版されています。演奏譜もながらく手に入りにくかった
ものですが、最近のスコアはなぜかドイツのHoeflichです。
それは出版されているようですが、なかなか入手しにくいもの
とのことで、店頭でみつけたらどうかお見逃しなく。
(特別寄稿 J.N)

■管理人より文中の言葉について少し補足します。
一般的には、「スコア」というと何かの「点数」みたいな
意味合いで使われると思いますが、音楽の場合の「スコア」は
演奏する全部の楽器の楽譜が書いてあるもので
「総譜」と呼ばれるものです。

オーケストラの曲だと指揮者の楽譜に全員分の楽譜が
書いてあり、指揮者はそれを見ながら各奏者の動きを把握して
全体をまとめていくことになります。

上記の文章にもありますように、ピアノの入った室内楽では、
ピアノの楽譜に全員分の楽譜が書いてあります。
これは、ピアノが指揮者と同様の役割を担う為だと思います。

フォーレのこの曲の冒頭部分は以下の通りです。
上の段から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン
ヴィオラ、チェロ、そして沢山の音符が書いてあるのが
ピアノです。このページの上段は全員の1小節目、
下段は全員の2小節目です。この曲はピアノで始まり、
2小節目で第2ヴァイオリンが旋律を弾きます。
フォーレP5冒頭のピアノ譜

そして、「パート譜」というのは、
それぞれの楽器の担当部分だけが書かれている楽譜です。
以下は、それぞれの楽器ののパート譜です。

上段左が第1ヴァイオリン、その右隣が第2ヴァイオリン
下段左がヴィオラ、その右隣がチェロです。
フォーレP5冒頭のVn譜セカンド
ヴィオラパートチェロパート

ご参考までに。




ファクシミリ
【Henle Facsimile Edition】
自筆譜
次回のライヴ・イマジン31でベートーヴェンの後期の四重奏曲第15番
Op.132を演奏します。ベートーヴェンの後期の四重奏曲の楽譜はその昔、
Peters以外はあまりお目にかからなかった時代があり、
その校訂にヨアヒムが係っていることから、これで十分だろうと
思っていました。何しろヨアヒムの先生はベームという人で、
ベートーヴェンの後期カルテットをシュパンツィッヒ四重奏団に替わり
演奏した人ですから。その後Henle社により入念に自筆譜、
初版譜などを検討したものが出版されると、なんと今度は同じく
Henle社から自筆譜ファクシミリが出版されました。
この曲の全貌が労せずして入手が可能となったわけです。
絶妙なタイミングを逃さずに活用するべく早速購入しました。
布張り装丁、色彩も忠実に再現、印刷されたとても立派で美しい本です。
悪筆で有名なベートーヴェンですが、思ったほどではありませんでした。
演奏楽譜の記載に違和感を感じたなら確認して納得をする。
その過程で色々なことを考える。また筆致の勢いから作曲者の想いを
読み取ることもできます。のちの人の誰かが書き加えた、
訂正したものなどは明らかに違うものと認められます。
これらの作業の結果、Petersの誤謬も発見しました。
あたりまえのことを普通にやる姿勢が一番大切で、
一番の近道だということ、そしてそれが出来る環境にある。
この人類の宝ともいうべき自筆譜ファクシミリが世に出るのに
ピアニスト・アンドラーシュ・シフの尽力が大きかったそうです。
彼には大いなる感謝をささげます。
(特別寄稿・J.N)

イサ楽譜
【Music Haven Isserlis Edition】
フンメル・「ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン」による変奏曲

フンメル(1778-1837)はモーツァルトの弟子であり、
ベートーヴェンの友人。さらにシューベルトは偉大な最後の3つの
ピアノソナタを献呈しています。この立派な肖像画がのこっている
ところみると当時は結構な評価をもらっていたに違いありません。
そのフンメルは1804年にソロピアノのための変奏曲を
ウィーンで出版しました。譜面がなぜか2声で書かれていることを
見つけ、びっくりしたイッサーリスがヴァイオリンとチェロのために
アレンジしたものがこの楽譜です。フンメルのゴーストに許しを得た
彼は当初6つのヴァリエーションだったものを3つにカットし、
この愛国的な歌をコンサートの最初、あるいはアンコールで
使えるようにしたものとのこと。ヴァイオリンパートは、
マキシム・ヴェンゲーロフのアイデアで、左手のピチカートなど
技巧的なところもありますが、実際のところ重音や高速パッセージ
には手を焼きそうです。いつかチャンスがあれば
ぜひチャレンジしたいものがまた一つ増えました。
(特別寄稿J.N)


yatchan2003

Author:yatchan2003
2003年から活動開始。
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