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2012 / 06
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リリークラウス
【Music & Arts CD1001】
モーツァルト ピアノ作品集 リリー・クラウス(ピアノ)

リリー・クラウスの名前も戦前からの音楽ファンには絶対的なものが
あるようです。特にモーツァルトの演奏にかけては神格化されている
といってもいいものでした。この復刻CDは1954年、アメリカの
ハイドンソサエティに録音されたものです。ハンガリーに生まれ、
コダーイや、バルトークの指導を受け、ウィーンのコンセルヴァトワール
ではシュナーベルが指導するというギフテッド・チャイルドは
やはり只者ではありませんでした。若干ペダルが多いかと思うような
ところもあるものの、インスピレーション溢れる演奏はモーツァルトを
自在に操ります。強弱のコントラスト、決してだれないフレージングと
絶妙なルバートが心を揺り動かします。47歳前後、このころが
演奏家としての最盛期だったことを思いました。後年のタッチが
荒れてしまってからの録音に失望したことがウソのようです。
第二次大戦中、インドネシアで日本軍の家族ともども捕虜となり、
終戦によりイギリス軍により解放されましたが、
日本軍は食事だけではなく、楽譜の差し入れまでしたそうです。


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ハーゲンQ
【myrios classics MYRSAM1006 】
ハーゲン四重奏団

結成30周年ということで制作されたCDです。ハーゲンカルテットの名前は
私自身の生きてきた時代とともにありました。そしてメジャーと呼ばれる
レコード会社が売り買いされて一つに収斂されていくなか、とうとう彼らは
長年つきあったドイツ・グラモフォンに別れを告げました。
そして気鋭の新しいレーベルとともに気分一新でに挑んだのは
彼らが一番大切にしているベートーヴェンとモーツァルトとウエーベルンの
3人の作曲家でした。その中からベートーヴェンは8番として知られている
ラズモフスキー四重奏曲の2番です。演奏はとても彫の深いものでした。
シャープにダイナミックに、そして引き締まったアンサンブルが奏でる
ベートーヴェンはひとつのシンフォニーを思わせます。
なんといい演奏でしょう!ところどころノンヴィヴラートがあったり、
2楽章あたりではおや?これはマーラー?なるほどベートーヴェンのDNAは
マーラーにちゃんと受け継がれています。そしてハーゲンにも。
さあ次のモーツァルトはkv428です。これもすごいんです。
一楽章展開部の転調がこれほど深い意味をもって動くなんて。
どうすればこういう表現ができるのかわかりませんが、単に楽譜を
読むだけではこうはなれないことだけはわかっているつもりです。
これはひょっとすると今年一番の収穫かもしれません。




パドモア
【harmonia mundi HMU907520】
シューベルト 「白鳥の歌」
マーク・パドモワ(テノール) ポール・ルイス(ピアノ)

ボストリッジという国宝級の歌手を生んだイギリスに、もう一人
とても素敵なテノールがいます。名前はマーク・パドモワ。
ボストリッジの身を削るようなぎりぎりの表現ではなくて、
端正でありながら情熱を併せ持ちリズムの正確さは抜群です。
どちらかと言えば、こちらのほうが好きですが、このCDジャケットも
いい写真ですね。歌曲はバリトンでは重くなって少々しんどく
なってしまうので、テノールで聴くのが好きで、ヴンダーリッヒなんかは
よく聴いていましたが、この「白鳥の歌」はみつかりませんでした。
穴埋めというわけではないのですが、パドモワはポール・ルイスという
シューベルトのスペシャリストを従えてとてもいい歌唱を
きかせてくれました。最終曲「鳩の郵便屋さん」の余裕、
「セレナード」はさりげないけれど、格調高く、媚びずに。
「憩いの場所」の緊張感と「さようなら」のリズム感と
無理なく伸びる高音域。挙げていけばきりがないけれど、
これ以上の表現の仕方を私はみつけられません。
余白に入ったフリューゲルホルンのオブリガートが楽しい「川の上で」、
初めて知りましたが、いつかイマジンのプログラムに載せてみたい曲です。



雑文集
「雑文集」村上春樹著  新潮社刊
私は、小説「ノルウェイの森」くらいしか読んだことがないので
いわゆる「ハルキスト」ではありませんが、幹事の趣味で
イマジンのプログラムの余白にはハルキさんの本の中からクラシック音楽に
かかわりのあるセンテンスを抜粋して載せてあります。
そろそろネタが尽きるころかなと思っていても、最近、小澤征爾さんとの
対話集なんかも出版され、どうしてどうして益々盛んとはこのことです。
今回採りあげたこの本は小説を読むよりも、「生」のハルキさんが
ぐっと前に出ていてとても興味が尽きないものでした。若い頃に始めた
ジャズ喫茶の一コマを描いた「ビリー・ホリデイの話」とか、
話題となった『「壁と卵」-エルサレム賞受賞のあいさつ』なんかも
収録されています。もちろん音楽ネタも満載ですが、
楽しめるというだけではなく、はたと膝を打つような「これだ!」という
センテンスに巡り合いました。ジャズピアニスト、セロニアス・モンクの
言葉として紹介されているものです。「新しい音(note)なんて
どこにもない。鍵盤を見てみなさい。すべての音はそこにすでに並んでいる。
でも君がある音にしっかり意味をこめれば、それは違った響き方をする。
君がやるべきことは、本当に意味をこめた音を拾い上げることだ」。
これを小説への展開、適用ととらえているハルキさんですが、
私たちにとっては、今やろうとしていることがまさにこの作業だったので、
ほとんど感動的ですらありました。人間の創造活動はそれが文学であれ、
音楽であれ、美術であっても根源は皆同じということを改めて実感しました。
 



シューベルトVnソナタ
【harmonia mundi HMC 901870】
シューベルト ソナタ、ロンド、幻想曲
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)
アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ)

センスで品のいいCDジャケット。音楽も何から何まで上質。
難曲「幻想曲」のピアノの前奏から幽玄の雰囲気が漂い、ヴァイオリンも
それをそのまま受け継ぎます。録音のせいか、少し音が小さめですが、
ファウストのヴァイオリンはすべてが音楽に奉仕している印象です。
技巧が前に出ないため、オレオレ奏者に比べるとあっけなく
物足りないかもしれませんが、ヴィブラートの使い分け、ルバート、
すべてにわたって繊細な表現をしてくれます。シューベルトの音楽は
そういうものだし、またそうでなければならないものです。
また実演ではピアノとヴァイオリンはこれくらいのバランスに
聴こえるに違いありません。ヴァイオリンはストラディバリウス、
「スリーピング・ビューティ」だそうです。また共演のメルニコフの
ピアノは素晴らしいの一言に尽きます。師匠のリヒテルよりも柔軟性も、
また技術的な面でもすでに凌いでいる部分さえもあります。
支える左手の運び、おどけたようなところ、弾むようなところなどなど
抜群のリズム感のうえに流麗に走る右手のパッセージ、こんなピアノを
後ろで弾かれたら共演者はたまらんでしょうね。お気に入りのディスク
であると同時にまたひとつ楽しみな奏者たちをみつけました。


カラヤン2
【EMI CMS7 63742 2】
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

この3枚組のCDにはモーツァルトの管楽器のための協奏曲と
協奏交響曲がおさめられています。そのなかでもお気に入りの曲は
協奏交響曲です。形式からもケッヘル番号(297b)からも
有名なマンハイム・パリ旅行のお土産の一つにちがいありません。
傑作、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲はイマジンでも
採りあげましたが、楽しい曲想の管楽器のほうも大好きです。
モーツァルトが微笑み、時には優しく慰めを、時には
はちきれんばかりの喜びを、そしてそのまま心をときめかせて
受け止めるだけです。カラヤンとベルリンの名人たちの録音は
それにふさわしく、しっかりしたバスに支えられた完璧な弦の上で
気持ち良く舞い、自由に羽ばたきスィングします。
まるで奏者たちがお釈迦様の手のひらの上で踊っているような
感じさえします。あーこの幸せの時が、終わらないでいつまでも
続いてくれるといい、そんなことを思わせる演奏は
めったにあるものじゃありません。
え?無人島に・?もちろん持っていきますよ!


バイエル
音楽之友社 刊
バイエルの謎-日本文化になったピアノ教則本
安田寛 著

バイエルといえば私も「いろおんぷバイエル」で育ちました。
まわりを見渡しても、「赤バイエル」だの「黄色バイエル」
なんて声もきこえてきます。このバイエルって何だろう?
どうしてこれから始めなければならないの?って思っていたところ、
「日本人の音楽教育」(カヴァイエ著・新潮選書)では
「バイエルはもうドイツではだれも使わない」と激しくバッシング(!)
じゃあ私たちはどうすればいいのか・・長い間使い続けたものには
それなりの意味があるのではないだろうか?
ところが今度はバイエルの強力なサポーターが現れました。
この本は読了後とてもさわやかな気持ちのさせてくれました。
慣れ親しんだものへの想いはもちろん、それよりバイエルの音楽的な
組み立てを知って目から鱗。さっそく古い楽譜を持ち出して、
「静かな手」(内容は本を読んでください)でゆっくりと弾いてみました。
そしてこの本は超一級の音楽資料としての価値を持つこと、
またひとつの謎解き、ミステリーとしてもとても魅力的なことと、
その過程でマインツをはじめとする関連した土地への旅立ちは、
旅行記としても楽しめました。
最後に成田さんが触れた、一冊の本を仕上げるにはよき編集者の存在と、
いろんな人の協力があってからこそ可能になるという、
安易なデジタル文明への警鐘ともいうべき一言も大切なものです。
5月31日に出版されたばかり、今が旬の名著です。


yatchan2003

Author:yatchan2003
2003年から活動開始。
音楽への想いを伝えたい!
お客さまと共に楽しみたい♪
をモットーに進化中。