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2013 / 09
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ローゼン
【Nimbus NI2559】
チャールス・ローゼン(ピアノ)

先の「ピアノ・ノート」では、その博識ぶりと音楽への情熱を
見せてくれたローゼン。どこかの批評にも北米に生まれた
最大のピアニスト、なんて書いたものもあって録音をさがして
みましたが、これがなかなかみつかりませんでした。
さてこのCDの題名は「ロマンティック・ジェネレーション」と言います。
ローゼンは1927年生まれ、リストの弟子、モーリッツ・ローゼンタールに
ピアノを学んでいます。なるほど、この表題はロマンチックな系譜に
乗っかっているってことかな、などと期待に胸を膨らませながら
聴きはじめました。しかし残念ながら、私たちは「超」のつく
一流の人たちの演奏を知っていました。一言でいえば物足りないのです。
ショパンのノクターンから聴こえてくるものは、確信に満ちた表現
ではなく、残念ながら譜面を音にしたレベルのものです。
リストとシューマンの印象もしかり。しっかりと弾いているし、
その技巧の確かさはみとめますが、それ以上のものではありません。
音楽とはなんと難しいものなのか、知識、理性だけでは
人に訴えかけることはできない、湧き上がるインスピレーションこそが
ギフテッドと呼ばれるものの正体でしょうし、
これだけは毎日の厳しい練習から得ることのできないものです。

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ローゼンタール
【Biddulph LHW 039】
コンプリート・アメリカン・レコーディングス
モーリッツ・ローゼンタール(ピアノ)

モーリッツ・ローゼンタール、1862年ポーランドに生まれ、
ショパンの弟子ミクリとフランツ・リストその人に教えを受けた
ピアニスト。このため息の出そうな経歴の持ち主が、私たちの生まれる
すぐ近くまで生存していたことに驚きを禁じえません。雲の上の人たちが
身近に感じてしまいます。全体的な印象としては、19世紀的な自在な
ルバートといってもどこかローゼンタールのものは品格が備わっています。
同じくミクリの指導を受けた、右手と左手のずれを楽しむコチャルスキ
のような弾き方にくらべて現代的です。もちろんリストの弟子に技術的な
不足があろうはずはありませんが、大ピアニストが皆そうであるように
その技巧を前面に出すようなことはなく、聴き終えたときの音楽的な
感興は心の琴線に直接触れ、泣けます。ホロヴィッツのウィーンデビュー
のチャイコフスキーの協奏曲での目も覚めるような見事なオクターヴ奏法を
聴いて「彼はオクタヴィアンであって、カエサルではないよ」とか、
絶頂期のパデレフスキをして「うん、彼は上手だね、でもパデレフスキ
じゃないでしょう?」と、ウィットに満ちた受け答えはとても魅力的で、
ウィーン大学で哲学の学位をとったことからも教養に溢れた魅力的な人物
だったこと想像します。弟子のひとりに「ピアノ・ノート」の著者、
ピアニストのチャールス・ローゼンがいます。

コルトーのアンコール
【NAXOS 8111261】
「アンコールズ」
アルフレッド・コルトー(ピアノ)

とても沢山のレコーディングを遺したコルトーですが、
なかでもこの1925年から26年(48歳から49歳)にかけて行った
アメリカのヴィクター・トーキング・マシーンへの電気録音は
技巧的な衰えがなく、たいへん瑞々しい独自のタッチと特別なルバートを
十分に楽しめます。ここではピアノも愛用のプレイエルではなく、
スタインウェイを使用していることが冴えを生だのかもしれません。
リストの「ハンガリー狂詩曲」ではコルトーってこんなすごい
ヴィルティオーゾだったかしら(失礼しました)と唖然とし、
ショパンの「エオリアン・ハープ」や「ワルツ」の美しさに
酔いしれました。そしてブラームスの「子守唄」の優しさに、
ウェーバーの「舞踏への勧誘」に心ときめかぬ人はいないはずです。
現代のピアニストたちがどこかに置いてきてしまった、
自己表現をすることという芸術の本質が開示されています。
じゃあ具体的にどうすれば?このCDを聴きなおしたのは、
実はその表現の仕方を盗んでやろうかなどという邪な気持ちからでしたが、
逆にすっかり虜にされてしまいました。


バッハカンタータクラブ
東京藝術大学バッハ・カンタータクラブ 特別演奏会
-OB会員と現役部員による
指揮 小林道夫
2013年9月1日 四ツ谷・紀尾井ホール

私事ながら、小林道夫先生には札幌に一時的に住まいを移された時から、
6年間もお世話になっています。ピアノを主に見ていただきましたが、
音楽そのものに直接触れた(!)、それこそいままでのものは
いったい何だったのかと振り返ったものですが、転勤が多い会社への
就職を機に「持ち運びができる」チェロをすすめていただき、
それが今に至っているわけです。教えていただいたことは
全くの素人だった人間にとっては、ある意味ではハードルが高く、
理解できなかったことも多々あったかもしれません。
ただ「原典版」を使用することの大切さとかバッハの装飾音の扱い
など、音楽に対する基本的な相対というものを確かなものとして
身に着けることが出来ました。

さて、藝大バッハ・カンタータクラブは小林道夫先生が藝大で
指導していた所謂クラブ活動の一つです。つまり音大のなかで音楽を
やるクラブという位置づけになりますが、ここからは大変優秀な
日本の音楽界をリードする人材が数多く巣立っています。
中でもチェロを演奏する田崎瑞博先生はその中の番頭格ともいうべき
方ですが、上京してから数年後に古典四重奏団が演奏するバッハの
「フーガの技法」に感激したことがきっかけとなってご指導をいただき
今日に至っています。その後田崎先生が実はバッハ・カンタータクラブに
属していたことを知り、また小林先生を大変尊敬されていることを知っ
て感無量になってしまいました。

さて、そのバッハ・カンタータクラブの特別演奏会が9月1日にあることを
知り、二人の師匠がそろって舞台に上がるとなればこれは行かずには
おけません。前売り券はすでに完売、当日券を求めて並びましたが、
小林道夫先生、80歳になってなお矍鑠とし、お元気な指揮姿を見ることが
出来たのは大変大きな喜びでした。バッハの有名な作品、
カンタータ「心と口と生きざまを持って」BWV147、
「マニフィカート」BWV243を生で聴くのは初めての経験ながら
美しくもドラマチックであり、そして鳴らすべき音がそのようになる。
びしっとした緊張感に包まれた演奏はやはり超一級のもので思わず
目頭が熱くなってしまいました。そしてプログラムの冒頭に
すごい言葉が載っていました。「演奏家としてこういう仲間達と一緒に
音を出せる幸せなことはないと思う。しかし、喜んでばかりいては
危ない。音の形を整えると音楽として聴こえてしまい、
霊感はどこかに置き去られる危険性はいつでも目の前にある。」と。
その背中を追い求めていたに違いないのにあっという間にその背中が
遠くに行ってしまったような強烈な一撃を喰らってしまいました。
追いかけるにはライヴ・イマジンを続けることで音楽の階段を一歩一歩を
着実に上ることしかないのですが・感動と反省と、忘れえぬ演奏会の
一つとなりました。先生ありがとうございました、
いつまでもお元気でご活躍ください!
(特別寄稿・ライヴイマジン幹事jn)

アジアユース1アジアユース2
アジアユースオーケストラ東京公演
2013年8月30日(金)オペラシティ コンサートホール
ブラームス作曲 交響曲第3番へ長調 作品90
ハイドン作曲 チェロ協奏曲 ハ長調 Hob.VIIb-1
ベートーヴェン作曲 交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」
指揮 リチャード・パンチャス  
チェロ独奏 スティーヴン・イッサーリス


アジアン・ユースオーケストラの最終公演に行ってきました。
香港、シンガポール、中国、ハノイ、などを経由して、日本では
大阪、鎌倉、そして最後に東京です。このオーケストラは、
ユーディ・メニューインにより1990年に設立され、中国、香港、台湾、
日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、
ベトナムから毎年厳しいオーディションで選出された、才能豊かな
若い音楽家で構成されています。香港での3週間のリハーサル・キャンプ
に続き、国際的に活躍する著名な指揮者やソリストとの3週間のツアーを
毎年行っています。

今回は、友人であり師でもあるチェロのスティーヴン・イッサーリス氏が
ソリストを務める公演ということで、以前から来日を楽しみに
していました。

芸術監督・指揮者のリチャード・パンチャス氏が舞台に最初に現れ、
流暢な日本語での挨拶の後に向かって左にコントラバス8名、
第1ヴァイオリン16名、チェロ12名、右にヴィオラ14名、
第2ヴァイオリン16名という対向配置で所狭しと団員が並びます。
最初のブラームスで、先ず大人数の弦楽器の分厚い音に圧倒されました。
地味な印象の第3番の交響曲ですが、隅々まで丁寧に弾き込んであって
指揮者の要求にもよく反応してまずは好印象です。

そして休憩後にハイドン。三分の一くらいの少人数になった弦をバックに
イッサーリス氏が自在に音楽を作り上げました。指揮者顔負けに各奏者に
目配りし躍動感あふれる演奏は音楽そのものの質が一段ランクアップした
印象。素晴らしい演奏に大喝采が鳴りやまず、ソリストは何度も舞台に
呼び戻されて3回ものアンコールを。3曲目は、「鳥の歌」でしたが、
今の世情を考えるとカザルスが国連の会議場で平和を訴え、弾いた姿が
ダブりました。なにしろこのオーケストラは中国人の隣で台湾人が、
そして日本人が同じ譜面をのぞきこんでいるのです。

最後のベートーヴェンには、イッサーリス氏と彼の23歳になる息子
ガブリエルもチェロで特別参加をしました。あまりにもポピュラーなだけに
逆に聴く機会の少ない「運命」ですが、音楽へのほとばしる情熱と
熱い演奏に、名曲たる所以を改めて実感しました。会場には出演者と
同世代の聴衆も多く普段の演奏会とは違う熱狂的な拍手と雰囲気に
包まれまています。そんな中、再びパンチャス氏が挨拶と共に出身国ごとに
メンバーを紹介し、会場は大いに沸きあがりました。

そしてアンコールには、エルガー作曲の「エニグマ変奏曲」より第9変奏。
「ニムロッド」という名を持つこの美しい曲は、親友の絆という意味も
あります。聴く側にとっても、そしてこれを最後にそれぞれの故国に旅立つ
彼らにとっても、この場に最もふさわしい旋律は会場全体に響き渡りました。

ありがとう、皆さん!本当に音楽っていいものだなあって心から思った一夜
でした。演奏の上手い下手、そんなものじゃない、何かを伝えようとする
真摯な姿勢と楽しさ、そして大きな感動に包まれながら。



yatchan2003

Author:yatchan2003
2003年から活動開始。
音楽への想いを伝えたい!
お客さまと共に楽しみたい♪
をモットーに進化中。