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2014 / 03
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ブーニン
「カーテンコールのあとで」 
スタニスラフ・ブーニン著  松野明子訳
主婦と生活社刊

ブーニンが1985年のショパンコンクールを19歳で制覇したことは、
まるで昨日のことのように記憶に残っています。NHKで放映された協奏曲の
熱狂の後アンコールで弾いた「仔犬のワルツは猛烈なテンポと鮮やかさで
圧倒しました。その後西ドイツに亡命、さらにごひいきの日本に在住(?)
という30年の間にブーニンはどこかその演奏に棘があるようになって
しまいました。ふと手に取った古い本でしたが、この内容はなかなか濃い
ものがあります。幼少からのコンクールそして亡命までを横軸に、
音楽を縦軸にして織り上げたもので、特にソヴィエトの政治体制下での
音楽家への締め付けは想像していた以上です。ロシアンピアノスクール
としてリヒテル、ギレリス、キーシンをはじめとする超一級のピアニスト
を生み出したイメージの国とのギャップの大きさに愕然とします。
結果として亡命をするしかなくなったブーニンですが、その過程は
まるで映画の一場面を見ているようで、この本のハイライトです。
音楽について語っている印象深いセンテンスを引用します。
ブーニンがショパンの前に行われたロン・ティボーコンクールで優勝した
時に弾いた協奏曲はリストやチャイコフスキーではなく、
なんとモーツァルトのK488(!)でした。いわく「私がこのオーケストラと
協奏するうえで、とても参考になった1枚のレコードがある。
ピアノのパートを演奏しているのが、尊敬するギーゼキング氏。
その天分とモーツァルトの音楽の解釈にかけて、今日でもまだ彼の右に出る
ピアニストはいないと思っている。モーツァルトのスタイルとピアニストの
音楽スタイルが一体化していて、両者の間に溝を感じない。双方がしっかり
結びついている。しかもごく自然に。~中略~浴びせかけられるような
聴衆の拍手を、私はそっくり、ワルター・ギーゼキング氏に捧げたかった。
このときから私は彼を、心の師と仰ぐようになる。周りに実在する先生たち
同様に、大切な師の一人となったのだ。」まったく同感で嬉しくなって
しまいましたが、このときブーニン17歳。この演奏を理想としたことに
天才の片りんをみました。

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ガヴ
【東芝EMI TOCE-13215】
アンドレイ・ガヴリーロフ(ピアノ)

ガヴリーロフ、1974年、18歳でのチャイコフスキー・コンクールの覇者。
弾けない曲はないとまで言われた超絶技巧によるショパンの「練習曲集」は
ポリーニのそれと並び称されるほどでした。そんなガヴちゃんは
1994年から2000年前後あたりまで精神的な不調が伝えられ、
コンサートの突然のキャンセルなど、してはいけないことをしてしまって
ステージからしばらく干されてしまいましたが、このところ立ち直った
様子が漏れ聞こえてくるのはなんとも嬉しいニュースです。
なにせカムバックが、モスクワでの一晩に4つの協奏曲(!)とのこと。
このCDはコンクール優勝から3年しかたっておらず、恐れを知らぬ若者が
そこにいます。ラヴェルの表現描写の見事なこと、圧倒的なパワーで
押しまくるプロコフィエフの「悪魔的暗示」の重いタッチから放たれる
フォルテシモから微妙なペダリングによる「ラ・カンパネラ」の
ピアニッシモまでピアノという楽器が表現できるあらゆること
をしてみせてくれます。そしてよく一番難しい曲の筆頭にあげられる
バラキエフの「イスラメイ」。ここまでやってくれると超一流の証、
極上の耳のごちそう、快感と言ってもいいものです。
私たちの時代のスーパーカーに錆なんか出ていませんように、
まだまだガヴちゃんにはこだわっているし、深化し、円熟した演奏を
是非もう一度聴いてみたいものです。





アイネクライネ
【DECCA 443-175-2】
アイネ・クライネ・ナハトムジーク  モーツァルト名演集
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮 クリーヴランド・オーケストラ

アイネ・クライネ、フルートとハープのための協奏曲、
そしてヴァイオリンとヴィオラのっ協奏交響曲。
おいしそうなモーツァルトの名曲集です。ドホナーニという指揮者のことは
ほとんど知りませんでしたが、ジョージ・セル、ロリン・マゼールと続いた
クリーヴランドの音楽監督をつとめた人で、
祖父にエルンスト・フォン・ドホナーニという作曲家をもつという
サラブレッド。アイネ・クライネの出だしを聴いただけで、
低弦のしっかり伸びた、バランスの良い音にまずびっくり。
昔、レコードで音がいいのはキング(英デッカの日本発売元)だって
教えられたことがすぐによみがえりました。そんな訳でアイネ・クライネは
出てくる音にそのまま身をゆだねていい気分を味わえましたが、
次のフルートとハープが思ったほどではなくて残念。ジョシュア・スミス
というフルート奏者はこの業界でもそれなりに名の通った人ですが、
テンポがゆっくりしすぎていて緊張感が希薄でした。
次の協奏交響曲はグラン・セプテットとして弦六人による編曲で
イマジンでも採りあげたことがあります。これはあたりでした。
ヴァイオリンのダニエル・マジェスケはセルに招かれ他の誰よりも長く
コンサートマスターを務め、ミスター・クリーヴランドの名を
ほしいままにした伝説の人。やはり一時代を築いたひとの味わいは
格別なものがあります。1993年、61歳で亡くなったそうですが、
置き土産にふさわしい立派な録音を遺してくれました。



シフのチャイコン
【DECCA 417 294-2】
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23
ドホナーニ 「きらきら星」の変奏曲 Op.25
アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
ゲオルク・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団

大物同士の組み合わせ、といってもいまや巨匠の域に達しているシフは
この時まだ33歳でした。チャイコフスキーの協奏曲はもちろん、
アマチュアの立ち入り禁止区域にある作品です。
ホロヴィッツをはじめとする剛腕ピアニストたちが腕を競っている
この大人気曲は演奏者に人を得た場合は一粒で二度おいしいものに
なります。シフの演奏からは彼の特質である、美感、美しいタッチと知性で
音楽そのものへの奉仕という姿勢がこの時すでに確立しているものを
感じます。剛腕がテクニックの見せどころとばかり弾き飛ばして
しまうような箇所も丁寧に音そのものの在り方を伝えてくれています。
こういうチャイコフスキーもあるんだな、と感心してしまいました。
モーツァルトをあれほど見事に演奏する人にチャイコフスキーが
弾けないわけがない、それどころかチャイコフスキーがモーツァルトを
アイドルにしていたことさえ、思い出しました。
共演に同じハンガリー出身のショルティ・シカゴを得たことも大当たりで、
ショルティの見事なオーケストラドライブと、デッカの素晴らしい録音も
相まって、一粒で二度どころか三度おいしいものになっています。
ドホナーニの変奏曲は迫力あるブラスの咆哮で始まりますが(すごい!)
有名なテーマが出てきてからはオーケストラとピアノの掛け合いによる
楽しいもの。ラフマニノフの同種の変奏曲を思い出しました。
センスのいいカップリングですね。




yatchan2003

Author:yatchan2003
2003年から活動開始。
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