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2015 / 03
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水車屋の娘
【DG 445 863-2】
シューベルト 歌曲集「美しき水車屋の娘」 D795
ブリギッテ ファスベンダー(メゾソプラノ)
アリベルト・ライマン(ピアノ)

歌曲のピアノ伴奏は大変な作業です。こればかりはおいそれと
手を出していけない、いえ手が出ない世界だと認識しているつもりです。
ピアノは一人で演奏しても十分楽しめるし、ここでは
王様(女王様?)気分で音楽とお付き合いができます。
ところがここに歌手というもう一方の王様が登場すると、
それまでのお山の大将がそれこそプライドを擲ってでも
ひれ伏さなければならない。なにしろ歌手の人たちは大王様。
やらなければならないことは王様をささえるだけではなく、
過ちもきっちりとフォロー。いつのまにか家来に成り下がって
しまいかねません。この世界には特別な名人が何人かいて、
この人たちは音楽を通じて家来に甘んじることなく、王様と
一体になれる人たちです。現役では、ボストリッジの伴奏をした
ドレイクがすぐに浮かびますし、日本には小林道夫さんという
世界に通用する名人もいます。なんといってもジェラルド・ムーアの
すごさはとても拙い文章では表現のしようがありません。
さてここでピアノを弾いているライマンはどうでしょう?
ファスベンダーという大歌手を前にして、残念ながら家来にさえ
なれませんでした。粗いタッチとたぶん歌手の要求を
消化しきれない拙い技巧。どうしてこんなひとと一緒に
やらなきゃならないんだろう?って嘆き節が聞こえてきそうです。
とても期待した「水車屋の娘」だったのですが、ピアニストの力量に
がっかりです。しかもライマンは作曲家としても名をはせているのに。




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チョンファミリー
【産経新聞社】
世界がおまえたちの舞台だ チョン・ファミリー物語
李元淑著 藤本敏和訳

チョン・ミョンフンといえば韓国の生んだクラシック界の大指揮者であり、
その姉チョン・キョンファといえばヴァイオリニストとして
世界の頂点に立つ一人。そしてチェロのチョン・ミョンファは
日本ではそれほど知られていないけれど、チョン・トリオのチェロとして
知っていました。国籍を別にしても兄弟姉妹が3人も西洋音楽の分野で
トップランナーとして活躍している例はあまり多くはないはず。
わたしもこのトリオの録音はよく聴きました。
この本は3人の音楽家を育てた肝っ玉母さんの物語です。
なるほどこの母親あっての子供たちですが、日本でもMIDORIのお母さん、
クライバーン・コンクールの辻井くんのお母さん。
みんなその生涯を賭しての命がけの子育てがあったからこそ
今があるようです。本の中にはアメリカでの生活、シアトルで始めた
コリアン・ハウスを手伝う若き音楽家達。
そしてあのピンカス・ズッカーマンが出場したヴァイオリン・コンクール
でのユダヤ社会との戦い。おもわずのめりこむようなエピソードも
沢山ありましたが、なによりまずこの偉大な母の考え方、行動力には
頭が下がります。その生き方に心から感心しました。
ただ、祖国を想うことがあっても、プライドが高くても
それが過剰だと辟易としてしまう。
子供たちはもうコスモポリタンとしての確固たる地位を
築いているわけですから。



小菅
小菅優ピアノリサイタル
2015年3月12日 トッパンホール
ベートーヴェン ピアノソナタ第30番 第31番 第32番

小菅優という類まれな才能を楽しみました。
今回がベートーヴェン・ソナタの全曲演奏会の〆の舞台でしたが、
ほど良いトッパンホールの響きは、奏者の思いをビシビシと
心に直接届けました。小菅さんのライヴは今回が初めてでした。
録音で聴いてイメージしていたのと同じようなピアノの音が
響き渡りました。ただやはり録音と違うのは圧倒的な
ダイナミクスとスケール。自信に満ちた打鍵には余裕すら感じさせ、
完成度の高い見事なベートーヴェンとなりました。32番の
最後の音が消え入り、大変な名演に長い静寂が会場を包みました。
一言だけ注文をつけるなら、全体の構成がとてもしっかりしていて
曲をきちんと構築していく印象なので、細部の特にp、ppで
ゆっくりとした部分にもっと本人の意思を反映できたら、
さらに深みが出ると思いました。ピアノ、あるいは調律のせい
かもしれませんが、音の立ち上がりが少しクリアでないため、
表現がストレートに伝わって来ない。あんなに見事に
コントロールしているのに音色の幅が少なめでしょうか。
ロマン派の曲ではないからやりすぎもどうか、ですが。
またドレスは女性にとって気になるものです。
ちょっと残念な印象でした。視覚的な印象も大切だし、
トロピカルっぽい柄はベートーヴェン後期の作品とは
アンマッチで、せめて無地でと思いました。
せっかくのコンサート、もう少しプログラムにもお金をかけて
ほしかった。全曲演奏会のトリでもあるわけだし、
ホール、スタッフ、そのほかすべてのものが揃ってこそ
特別のものが提供されるわけですから。
私たちアマチュアの奏者と音楽家(芸術家)とは
共通の価値観を持っています。だから私たちは彼らの成長を
楽しみにしているし、その時々でのベートーヴェンを
これからも聴き続けたいと思いました。
今回の小菅さんの演奏会から目の当たりにしたことは、
その大切な第一歩として深い印象を受けました。



イサ楽譜
【Music Haven Isserlis Edition】
フンメル・「ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン」による変奏曲

フンメル(1778-1837)はモーツァルトの弟子であり、
ベートーヴェンの友人。さらにシューベルトは偉大な最後の3つの
ピアノソナタを献呈しています。この立派な肖像画がのこっている
ところみると当時は結構な評価をもらっていたに違いありません。
そのフンメルは1804年にソロピアノのための変奏曲を
ウィーンで出版しました。譜面がなぜか2声で書かれていることを
見つけ、びっくりしたイッサーリスがヴァイオリンとチェロのために
アレンジしたものがこの楽譜です。フンメルのゴーストに許しを得た
彼は当初6つのヴァリエーションだったものを3つにカットし、
この愛国的な歌をコンサートの最初、あるいはアンコールで
使えるようにしたものとのこと。ヴァイオリンパートは、
マキシム・ヴェンゲーロフのアイデアで、左手のピチカートなど
技巧的なところもありますが、実際のところ重音や高速パッセージ
には手を焼きそうです。いつかチャンスがあれば
ぜひチャレンジしたいものがまた一つ増えました。
(特別寄稿J.N)


アルトゥール
【RCA 88697911362】
ルービンシュタイン コンプリート アルバム コレクション

このボックスにはアルトゥール・ルービンシュタインの
ほとんどの録音が142枚のCDに収録されています。
目玉はカーネギー・ホールでのライヴ音源がCD3枚分
含まれていることにあります。そしてその中の更なる目玉は
アルトゥールに献呈されたストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」
より3章が含まれていること。さらに大変豪華な解説書が付属しています。
写真がたくさん入っているので眺めているだけでもとても楽しいもの
ですが、ネラ夫人や家族とのものはとても心温まるものがあります。
アルトゥールは歳をとればとるほど滋味がでてきて
本当にいい表情になりました。人はこうじゃなきゃ。
さて、「ペトルーシュカ」はアルトゥールはコンサートでは頻繁に
採りあげていたようですし、お気に入りのピースのはずなのに
なぜかスタジオのレコーディングがありませんでした。
これがまたなんともド迫力の演奏で、それこそ椅子から
滑り落ちそうなくらい。
アルトゥール版(クレジットもそうなっています)ともいうべきもので、
オリジナルに相当手が入っているようにきこえます。
比較してみているわけではありませんが、一般に知られているものとは
かなり違います。ただこの音楽は立派で、アルトゥールが
「イゴール、ピアノ曲の楽譜ってのはこういう風に書くもんだぜ」
と言っているのが聞こえてくるようです。どんなものを弾いても最高の
音楽が出現するのですが、期待を裏切らぬ本当に素晴らしいものでした。
バッハの「シャコンヌ」はご存じブゾーニの編曲のもの。
アルトゥールにとってバッハは容易に越えられない壁だったかも
しれませんが、このシャコンヌは偉大です。もう書き出すと
きりがないですが、尽きせぬ泉のごとくこれほどに音楽が溢れる
このセット、もちろんもし無人島に持っていくなら、最右翼でした。

yatchan2003

Author:yatchan2003
2003年から活動開始。
音楽への想いを伝えたい!
お客さまと共に楽しみたい♪
をモットーに進化中。