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2016 / 04
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ティボー
【PHILIPS PHCP-3392/3】
ジャック・ティボーの芸術
ブラームス・ヴァイオリン協奏曲、
モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲ほか

ジャック・ティボー(ヴァイオリン)
ジャン・フルネ指揮 コンセール・バドルー ほか

ティボーのヴァイオリンでブラームス?
そりゃあ粋で聴かせるティボーと粋とは無縁の
ブラームスですもの。それにフランス人はブラームスのことを
毛虫の如く嫌っていたらしいじゃありませんか。
録音は最晩年、ティボーはこの8か月後には帰らぬ人と
なりますが、所謂よれよれの演奏ではありませんでした。
やっぱり粋な紳士がそこにいます。そのためブラームスの
シンフォニックな魅力というよりは、決して重々しくなく
いつのまにか音楽に引きこまれて、幸福の一時を
約束してくれます。コルトー、カザルスとのピアノ三重奏の
魅力はティボーのヴァイオリンにあるのと同じようなアプローチに。
この際、音程がどうのこうのと無粋なことを言うのは
やめにしましょう。ライヴ録音ですが聴くには問題なく、
よくぞこんなものがのこっていたものです。




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キーン
藤原書店刊 
ドナルド・キーン 小池政行(聴き手)
戦場のエロイカ・シンフォニー -
私が体験した日米戦

キーンさんが、戦時中、日本軍の捕虜を集めて
持ち込んだ蓄音機で、レコードを聴かせた、ということは
どこかで聞いたことがあったので、表題に引かれて
読んでみました。アッツ島、ハワイ、そして沖縄の激戦地を
渡り歩き、そこで見たものはやはりこの世の地獄を
思わせるものであったはずですが、むしろあっさりと淡々と
話し進められます。で、肝心のエロイカ・シンフォニーですが、
実はフィクションであった部分もあったとかで、正直なところ
肩すかしを食ってしまった感じです。
つまり何故、捕虜たちに「音楽」をきかせようとしたのか、
あるいは何のために、というところが希薄なため結果として
彼らが聴いた後の反応もほとんどない、というようなことに、
だからどうなの?となってしまいます。
キーンさんはクラシック音楽が大好きだし、その造詣の深さは
半端ではないというのはよくわかっているのですが、
だからといって他のだれもが同じではないし、
逆に同じであってほしいと思いたった行為であっても、
その思いを受け止めるにはあまりにも特別な環境下では
意味のないことだったのでしょう。いえ、特別な環境でなくても。
リリー・クラウスが収容所で音楽を奏でる、
ドイツの捕虜たちが第九を演奏する、
ナチスの収容所で「世の終わりの四重奏曲」が初演される
特殊な状況でも音楽が生きることそのものの行為になった事
とは比較にならないものでした。


ギレリス
【DG 449 721-2】
グリーク・「抒情小曲集」
エミール・ギレリス(ピアノ)

鋼鉄の男というイメージのあるギレリスが
全くヴィルティオーゾ的ではないグリークの小品を
どう料理するのかがとても興味がありました。
第一印象はとても「丁寧に弾いている」ということでした。
有名な「アリエッタ」の優しいタッチに包まれたときには
おおさすがに(!)でしたが、その後の続く曲は
「あまり共感しているわけじゃないなあ」というものです。
上手にどこからもケチがつけられない、でもあまり面白くもない
という典型でポリーニの演奏と似ているなあというのが
正直な感想です。それとこの曲集で最大の規模を持つ
人気曲「トロルドハウゲンの婚礼の日」が入っていません。
ギレリスが亡くなったのは1985年のことですから、
もう30年以上の歳月がたちました。20世紀後半の
平板なリズムに支えられた演奏スタイルは
正確ではあっても、音楽の湧き立つような喜びと、
大切な自己表現の枠を狭めてしまったのかもしれません。

ブーニン
【DG 427 315-2】
シューマン 子供の情景、アラベスク、ほか
スタニスラフ・ブーニン(ピアノ)

ブーニンが1985年のショパン・コンクールを19歳で
制覇してから、もう25年以上が経ちました。
今でも超高速「子犬のワルツ」はあまりにも衝撃的だった
せいもあってしっかり覚えています。
その時のブーニンフィーバーのものすごさは
クラシック音楽という枠を超えたものでした。
マスコミをも味方に付け、あまりにも正統すぎる経歴を前にして、
少々の批判、批評なんかは焼け石に水みたいなもの。
このサラブレッドの血筋を辿ってみるとリヒテル、ギレリスを
育てたゲンリッヒ・ネイガウスを祖父に持ち、モスクワ音楽院
入学前に(!)ロン・ティボーコンクールで優勝しています。
その後日本での特別待遇に心が動いたのか、
結婚して日本に在住しているらしいです。さて、シューマン。
優勝してからわずか3年後に録音されたもので、
期待が高かったものです。しかし残念ながらこの演奏からは
作品への共感は残念ながら聴き取ることができませんでした。
場違いで畳み込むような表現、突然のアッチェレランド、
流れを断ち切るようなブレスなどあげていくときりがありません。
奥尻島を襲った大津波のあと、現地にピアノを持ち込んで慰問をし、
そのピアノを寄付したとか。3.11の後にも、自分にできること
しなければならないことを実行する姿勢には頭が下がりました。
しかしそれは本来の意味を見失っては何にもならないことです。
ショパン・コンクールの時の圧倒的な輝きを今一度、
と思っているのは私だけではないはずです。


yatchan2003

Author:yatchan2003
2003年から活動開始。
音楽への想いを伝えたい!
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