2017/02/13 21:42:22

【新潮社】
「巌本真理 生きる意味」
山口玲子著
乳がんを患った真理さんが、執刀医に「このまま
バイオリンが奏けなくなってしまうなら、救っていただいても
生きる意味がないのです」と訴えたと言います。
バイオリンが体の一部であり、それを通じて自分の言葉を
世の中に放つ。真の意味での芸術家がここにもいました。
よく言う、まず「生きること」、生きてからこそバイオリンが・
などという言葉はここでは通用しません。
巌本真理さん、1926年にアメリカ人の母と日本人の父との
間に生まれました。そして最も多感な時代を最も困難な時代に
過ごしています。異質なものを潰そうとする「いじめ」により
不登校にまでなってしまいました。そんななか12歳で
音楽コンクールの一等賞、20歳で東京音楽学校(藝大)の
教授に抜擢されましたが、華やかなソリストの道を捨て
最もストイックな「弦楽四重奏」という世界でその存在を
しられました。この本は比較的淡々とその生涯を描いて
みせますが、サクセスストーリではなく一人の人間・
巌本真理が53歳で短い生涯を閉じるまで己の信じる道を
突っ切る姿が鮮やかに浮かび上がります。
自分の音楽を信じる、こうじゃなきゃだめだ、という言葉は
自分の音楽そのものだったのでしょう。
世に天才と呼ばれる才能を持った人たちはみな同じDNAを
もっています。巌本真理弦楽四重奏団を生で聴く機会を
持たなかった私はとても残念です。
真理さんの言葉を受け止めてみたかった。
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