2018/08/01 18:30:46

【筑摩書房】
「グレン・グールドのピアノ」
ケイティ・ハフナー著 鈴木圭介訳
グレン・グールド、私にとっては「ゴルトベルク」ではなく
ピアノを始めたころの「インベンションとシンフォニア」でした。
しかしながら彼の録音から感動をもらったことは
ありませんでしたがこんなところで感動をもらうなんて。
良書です。グールドの音楽と、スタインウェイのピアノ、
そして調律師たちの織りなす物語。グールドのピアノへの
こだわりは半端ではありません。ひたすらそれは彼の音楽に
奉仕するべきものとして。一切の妥協を許さぬ姿勢は
ゴルトベルクの2度目の録音に日本のメーカーの楽器を
手にせざるを得ない状況にまで追い込まれます。
そしてこのアルバムがリリースされてから1週間後、
以前の録音よりさらに光芒を放つゴルトベルクに
抱かれるようにしてグールドはこの世を去ります。
彼亡き後にあるピアニストがグールドの愛機CD318で
バルトークを弾いたとき、まるでそれを嫌がるかのように
トロントのほうに身をよじって逃れようとしたピアノに問います。
「あなたはどこへ行こうとしているの?」と。
このエンディングに感動しました。グールド聴くべし。
食わず嫌いはもしかすると人生にとって大きな損失に
なるところでした。(特別寄稿・J.N)
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